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禅寺の朝のおつとめと粥 ― 日々のリズムの中の食事

禅寺の一日は夜明け前に始まる
曹洞宗では、挨拶、掃除、調理、食事、洗面にいたるまで、日常生活のすべてを修行とみなします。曹洞宗の公式サイトは、修行道場の一日の流れの一例を載せています。その例では、午前3時30分に振鈴(起床の合図)が鳴り、洗面のあと3時45分から暁天坐禅(夜明け前の坐禅)を行い、4時30分から朝課諷経(朝のおつとめ)が続きます。
同じ例では、7時に小食(朝食)、8時に作務(清掃などの労働)、12時に中食(昼食)、17時に薬石(夕食)、21時に開枕(就寝)となっています。大本山永平寺の参禅案内にも、4時の振鈴のあと法堂で朝課を行い、その後に小食、坐禅、作務と進む一泊二日の流れが示されています。朝課は一年365日行われ、開始時刻は日によって変わるとのことです。なお、これらは一例で、時刻や内容は道場や季節によって異なります。

朝のおつとめ(朝課)
公式サイトの説明では、朝課諷経は一仏両祖への礼拝に始まり、世界の平和や人々の幸せを祈り、歴代の祖師や先祖への供養も行うものです。つまり、朝の食事の前に、坐禅と読経で一日を始める流れになっています。食事は、そうした日課のひとつとして位置づけられています。
朝は粥、昼は飯
食事の作法を道元禅師が著した『赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)』について、曹洞宗の公式サイトは、約800年近く前に記され、今も僧堂で受け継がれていると説明しています。書名の「粥飯」は、朝は粥、昼は飯が基本であることから、食事そのものを表す言葉になったとされます。
朝の食事は、道場では「小食(しょうじき)」と呼ばれる例が公式の資料に見られます。国語辞典などには、禅寺の朝食を指す「粥座(しゅくざ)」という言い方も載っていますが、呼び方は寺や宗派によって異なる場合があるとされます。この記事では、朝の粥の食事を、公式資料に沿って「小食」「朝の粥」と呼びます。
粥に添えるものについては、曹洞宗僧侶の枡野俊明氏の著書『禅と食』を紹介する報道(サライ.jp)が、修行中の朝粥には胡麻塩と香菜(漬け物)を少量添えるだけ、と伝えています。これは書籍紹介を通じた情報ですので、実際の内容は道場や時期によって異なると考えられます。同記事は、僧侶と同じ朝食を一般の人が毎日続けるのは現実的ではないとして、週に1〜2回、米から炊いた粥を朝食に取り入れる提案をしています。
食事の作法の概要
曹洞宗の公式サイトによると、食事は坐禅を行う僧堂で、袈裟を着けて行われます。食事の前には坐禅をし、偈文(げもん)を唱えます。使う器は応量器(おうりょうき)という、漆塗りの大小の椀を入れ子式に重ねたもので、食事のときは包んでいた布を広げ、その上に器を並べます。作法の主な点は次のとおりです。
- 生飯(さば):食べる前に、椀から数粒のご飯を取り分けて脇に置きます。独りよがりな心を戒め、分け与える心を形にしたものとされ、集めた粒は堂の外の石台に供えて、鳥や虫などの生き物に施します。
- 適量をよそう:各自の体調に合わせた分量だけを盛るため、食べ残しが出ないとされます。
- 食後の始末:食後に茶や白湯で椀を清め、重ねて収めます。このため、百人の僧が同時に食事をしても洗い物は出ないと説明されています。
- 無言で食べる:読経のほかは無言で、時間をかけて食事に集中します。その姿勢は坐禅と同じだと公式サイトは説明しています。
食前に唱える『五観の偈(ごかんのげ)』は、五つの項目からなります。食べ物がここに届くまでの手間と命に思いをめぐらすこと、自分が食事にふさわしい行いをしているかを振り返ること、貪りなどの迷いの心を戒めること、食事を体を保つ「良薬」として受け止めること、仏道を成すために食事をいただくこと、です。これらは、食事を欲望を満たすものではなく修行の一部と捉える考え方を表しています。偈の詳しい内容は典座教訓と五観の偈の記事で、調理を担う典座の役割も紹介しています。
一日のリズムとして食事を見る
先の例の時刻を並べると、朝の坐禅・朝課のあとに小食、作務のあとに中食、夕方のおつとめのあとに薬石、という流れになります。薬石は、空腹をしのぐ「良薬」として夕食をとる習慣に由来すると、公式サイトは説明しています。食事は、坐禅や読経、作務とひと続きの日課の中にあり、それぞれの食事に名前がついているのも特徴です。
ここで紹介した内容は曹洞宗の道場についてのもので、禅宗といっても宗派や寺によって日課や食事の内容は異なります。また、僧侶の修行としての食事と、一般の人が体験する朝食とは、同じものではありません。

体験を考える旅行者へ
曹洞宗の行事案内には、東京のホテル内の禅道場で、坐禅、作法に従った朝粥中心の精進料理の朝食、写経を組み合わせた一般向けの体験が行われた例が紹介されています。所要の目安は、坐禅が約60分、朝粥が約30分、写経が約30分で、当日の状況により流れが変わることもあるとされています。
寺院や宿坊で朝のおつとめや朝食を体験できる場合もありますが、内容や時刻、参加の条件は施設ごとに異なります。参加の可否や服装、アレルギー、乳製品などの食材は、予約時に直接確認してください。精進料理と現代のヴィーガンも同じものではありません。高野山の宿坊の概要は高野山の宿坊と精進料理を参照してください。
トップ画像: 曹洞宗の大本山のひとつ、福井県の永平寺。 写真: 雷太 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
