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旧暦の1日と15日に菜食をする習慣――ベトナムの「mùng một」と「ngày rằm」

2026年10月9日

旧暦の「mùng một」と「ngày rằm」

ベトナムでは旧暦の1日を「mùng một」、15日を「ngày rằm」と呼びます。おおよそ新月と満月の頃にあたり、この2日に肉や魚を控えて菜食(ăn chay)をする習慣が、特に仏教徒の間で知られています。ベトナム国家観光局の公式観光サイトによると、この日は多くの仏教徒が菜食をとるため、食堂では菜食の選択肢が増え、朝市でも菜食の品が見つかるといいます。旧暦の日付は西暦では毎年ずれるので、旅行前に旧暦カレンダーで確認する必要があります。

菜食そのものの背景はなぜベトナムではCơm chayを食べるのかで紹介しています。この記事では、月に2回めぐってくる暦のリズムに注目します。

線香と花が供えられた寺院の香炉
線香と花が供えられた香炉。 写真: Daderot / CC0 / Wikimedia Commons

仏教徒はどう受け止めているか

ベトナムの仏教系メディア「Giác Ngộ(覚悟)」の2016年の記事によると、これらの日は「trai(斎)」の日とされます。trai は、狭い意味では菜食、広い意味では清らかさを指すという説明です。理由としては、慈悲の心を育てることや殺生を減らすことが挙げられ、寺に参って礼拝、読経、懺悔、供養、法話の聴聞、坐禅などを行うことも勧められています。月に2日行う場合は1日と15日(または14日と30日)、4日行う場合は1日・14日・15日・30日とされ、日の数え方には幅があります。

ベトナム仏教教会(Giáo hội Phật giáo Việt Nam)の情報ポータルphatgiao.org.vnの記事は、1日と15日を月の始まりと満ちた時として、心身を整えて振り返る機会と位置づけています。同時に、菜食は自発的で誠実なものであり、徳を見せたり他人を裁いたりするためのものではないとも述べています。

月の数日だけの菜食と、長期の菜食

月のうち決まった日だけ菜食をする形は「chay kỳ」、長く続ける形は「chay trường」と呼ばれます。Giác Ngộの2024年の相談記事によると、大乗仏教の僧尼は一般に厳格な菜食で、在家の人には少なくとも月2日の菜食が勧められ、日数を増やすことや chay trường はさらに望ましいとされます。一方で、人それぞれ事情が異なるため、在家に押しつけるべきではないとも述べています。五戒を守ることや布施、礼拝、読経など他の実践も同じように大切で、菜食は修行を支える補助的な条件だという説明です。同じ記事は、初期の仏教には菜食の決まりがなく、上座部の僧侶は今もそれにならって菜食をしないことにも触れており、仏教の中でも宗派によって食の考え方は異なります。

ベトナムの禅院にある、菜食の食堂を備えた建物
ヴィンフック省のタイティエン竹林禅院の、1階で菜食を出す食堂の建物。 写真: Bùi Thế Tâm / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons

寺院・市場・食堂の様子

  • ハノイ:Giác Ngộの2009年の記事によると、1日と15日や祭日には寺院で菜食が出され、Quán Sứ、Trấn Quốc、Cống Trắngなどの古寺が紹介されています。Cống Trắng(Phụng Thánh寺)の住職の尼僧は、同じ食材でも調理法で味が変わると語り、同寺の食事は季節で変わる17~18品ほどだとされています。
  • フエ:VnExpressの2012年の記事によると、一年中菜食を続ける人(chay trường)もいれば、旧暦の30日・1日・14日・15日だけ菜食にする人もいます。Đông Ba、Bến Ngự、An Cựuの各市場では肉料理に似せた精進料理が売られ、1日と15日には菜食版の日常食も並ぶほか、この日はうなぎや貝、魚の麺の店が休むこともあるそうです。
  • ホーチミン市:VnExpressは2010年、新年最初の満月(旧暦1月15日)に、福を願って菜食をとる人で菜食食堂が満席になり、市場の野菜が数時間で売り切れたと報じました。年に一度の特別な日の例で、普段の1日・15日も同じ混み方とは限りません。
  • 盂蘭盆(Vu Lan、旧暦7月):Viet Nam Newsの2016年の記事では、月に2日(1日と15日)菜食をするという家庭が、盂蘭盆の月は1か月菜食を続けると紹介され、この時期は菜食の店の客が増えるとされています。

いずれも特定の年や地域の報道で、実際の様子は地域や家庭、店によって異なります。

旅行者にとっての意味

  • 日付は旧暦です。西暦では毎年ずれるため、旅程が決まったら旧暦カレンダーで1日と15日を確認しておくと目安になります。
  • 店探しには「quán chay」「cơm chay」で検索するのが便利です。店の探し方はベトナムでCơm chayを探すにはも参考になります。
  • ベトナム国家観光局の案内には、「Tôi ăn chay(私は菜食です)」「không nước mắm(魚醤なし)」といった便利なフレーズが載っています。含まれる食材は店ごとに違うので、気になる点は注文時に尋ねると安心です。
  • 寺院は、仏教徒が参拝や修行に訪れる場でもあります。見学するときは静かにし、服装にも気を配ってください。食事の位置づけはCơm chayとは何かで説明しています。

旧暦の1日と15日の菜食は、暦と信仰と日々の食卓が重なった習慣です。守り方には幅があるので、地域や家庭ごとの違いとして受け止めるのがよさそうです。

トップ画像: ホーチミン市の小さな仏教系食堂で出された、肉に見立てた菜食のおかずとご飯。 写真: Takeaway / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons

出典