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精進だしとは ― 昆布・干ししいたけで取る、動物性を使わないだし

2026年10月9日

かつおぶしを使わない理由

精進料理は、仏教の「不殺生」、つまり他の命をむやみに奪わないという考え方に根ざした料理です。肉や魚は使わず、野菜・海藻・きのこ・穀物・豆腐などの大豆製品が中心になります。曹洞宗の公式サイトも、レシピ集の冒頭で不殺生の戒めを踏まえた調理の姿勢を説明しています。

かつおぶしは魚、煮干しは小魚を原料とするだしです。精進料理ではこれらを使わず、植物性の素材から取る「精進だし」を用います。料理全体の考え方は精進料理とはの記事で紹介しています。

砂利の浜に並べて乾燥させている昆布
浜に並べて干される昆布(1985年撮影)。 写真: Marie-Sophie Mejan / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons

精進だしの素材と特徴

参考にした資料では、次のような素材が紹介されています。

  • 昆布:昆布だしは海藻だけで取れる植物性のだしです。うま味インフォメーションセンターは、昆布を天然の食材の中でもグルタミン酸が特に多いものと紹介しています。
  • 干ししいたけ:グアニル酸を含み、精進料理で使われる代表的なだし素材です。味が強く出やすいため、量の加減が大切だとも説明されています。
  • 昆布と干ししいたけの組み合わせ:曹洞宗の公式サイトの「精進ダシ」は、昆布と干ししいたけを水に数時間つけて取る水出しです。前夜に仕込む方法が紹介され、昆布や水質などで出方が変わるため、厳密な計量は不要とされています。農林水産省の郷土料理のページでも、精進だしは昆布と干ししいたけで作られています。
  • 大豆・かんぴょう・野菜の切れ端:ある精進料理店の料理人は、昆布、かんぴょう、大豆、干ししいたけを動物性のだしの代わりの素材として挙げ、野菜の皮や硬い部分もだしに使う例を紹介しています。

キッコーマンの解説では、昆布や干ししいたけを水につけて取る「一番だし」と、同じ素材を新しい水で煮出す「二番だし」が紹介され、それぞれ向く料理が異なるとされています。曹洞宗のレシピ集には、だしを取ったあとの昆布を使った料理も載っており、素材を使い切る姿勢がうかがえます。

山積みになった干ししいたけ
干ししいたけ。 写真: François Nguyen / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons

うま味成分のはたらき

だしのうま味を担う代表的な成分は、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸です。うま味インフォメーションセンターによると、グルタミン酸は昆布、イノシン酸はかつおぶしや煮干し、グアニル酸は干ししいたけに多く含まれます。発見は1908年(池田菊苗による昆布のだしからの取り出し)、1913年、1957年とされています。

グルタミン酸にイノシン酸またはグアニル酸を組み合わせると、単独よりうま味が強く感じられる「相乗効果」が知られています。同センターは、昆布とかつおぶしの一番だしで、グルタミン酸だけの場合の約8倍と紹介しています。昆布としいたけの組み合わせはグルタミン酸とグアニル酸の組み合わせにあたるため、魚を使わなくても、同じ相乗効果の考え方が当てはまると考えられます。

干ししいたけについては、島根県の資料が、しいたけのうま味はグアニル酸であり、加熱すると増すと説明しています。

旅行者への実用的な注意点

精進だしは精進料理の世界のだしであり、一般の和食店では事情が異なります。日本政府観光局(JNTO)は、一見肉が入っていない料理でも、だしやスープ、たれに肉や魚(かつお節など)が使われていることがあると注意しています。観光庁のガイドも、日本料理では出汁を使うことが多く、かつおなど動物由来の食材を避ける人がいることを示しています。野菜料理という名前だけでは、かつおだしが入っていないとは言い切れません。

  • 予約時に、肉・魚に加えて、かつおだしなど魚のだしも避けたいことを具体的に伝える。コース料理は特に、事前に伝えておく。
  • 日本語で書いた食事の希望カードや翻訳アプリを使う。
  • 寺院や宿坊の精進料理でも、内容は施設ごとに異なり、乳製品が使われる場合もあるとJNTOは述べています。気になる点は予約時に確認する。
  • 調味料や加工食品は、原材料表示も確認する(観光庁ガイド)。

昆布・干ししいたけ・大豆はいずれも植物性の素材ですが、実際に食べられるかどうかは、調味料や他の材料、そして一人ひとりの食の基準によって変わります。宗教的な背景をもつ精進料理と現代のヴィーガンも同じものではありません。違いは精進料理とヴィーガンの違いで、訪問時の実際は精進料理を体験する旅行者のための案内で確認できます。

トップ画像: 日本の春の精進料理。 写真: サフィル / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

出典